てんりせいかつ

てんりせいかつ VOL/51
昔から変わらない農園で、笑顔を作り続ける
―後編―

くらし
2024.05.15

第51回

天理観光農園

左迫間佳奈子 

「てんりせいかつ」では、天理で自分らしく暮らし、活躍されている方々を訪ね巡りご紹介しています。前編『みかん小屋から始まった、代々の観光農園』に引き続き、今回も天理観光農園の左迫間佳名子さんです。昔から来ているお客さんと最近のお客さん、日常の仕事で大切にしていること、地元に対する想いなどについて、天理市園原町で伺いました。

昔の客がこれからの客を連れて行きたい農園

「みかん狩りで遊ばせたい」という想いで始まった天理観光農園は、お客さんの声を聞きながら、バーベキューや宴会もできるところになり、それからカフェもできました。時代に伴って、遊び方が増えてきましたが、もっとも大事なことは変わっていません。

「天理観光農園の中身はそんなに変わっていない」と左迫間さんは話しました。「お父さんの時から来てくれはった人は、バーベキューにずっと来てくれているし、お祖父ちゃんがみかん狩りをしていたころから、まだ来てくれはる人も本当に多い。何も変わっていないから、また来てくれはると思います」。

昔からのお客さんが、次の世代を連れて来ることがよくあります。「お客さんも、『小学校の時に来たんです』と言って、子どもや孫を連れて、今でも来てくれます」と左迫間さんは言いました。「そう聞いて嬉しいです。楽しかったから、多分また来てくれていると思います」。

天理観光農園の中身が変わらず、その魅力がより多くの人に伝わってきたようです。「家族が増えてきました。若いカップルもみかん狩りをするし、20歳ぐらいの女の子や高校生の子はここのカフェに来ています」と左迫間さんは言いました。「今までは高校生がここまで上がることがなかったけど、若くて可愛い女の子が増えました」と嬉しそうに言いました。

笑顔で帰ってもらいたい思いやり

左迫間さんはCafeわわのキッチンを中心にして動きながら、天理観光農園の全てのお客さんをなるべく見ています。「バーベキューやパーティで『あ、ここが困ってはるな』と思ったら、さっとこっちからお喋りをして、ちょっとした気遣いですけど、すぐ動けるようにしています」。

山の辺の道を一人で歩いている人もよく天理観光農園で休憩をします。左迫間さんはそういう人に声をかけるのが好きです。「ちょっと喋りかけたら、めっちゃ楽しくいろいろ喋ってくれはるんですよ!」と彼女は微笑みました。「一人で歩いているおじさんは怖そうですけど、喋ったら、めっちゃ喋ってくれます。もくもくと歩いていると思ったら、みんな山の辺の道を歩いている人はいい人ばっかりです」。

みなさんに笑顔で帰ってもらうことが大事です。また来てくれたら、その小さな親切の実りを感じられます。「お客さんも私のことを覚えてくれます。『あの姉ちゃんいるか?』って。います。『いつもいます』と答えるようにしています」と笑いました。

農園が静かになる冬に、焚火で興奮する

春と秋はハイシーズンで、夏にもイベントがあったりしますが、どうしても冬には天理観光農園が静かになります。「1月と2月は果実のピールを作ったりすることや、春に向けた準備はそういう時期が大事なんですけど、冬はお客さんの動きがやっぱりちょっと減りますね」と彼女は説明しました。

冬に合う遊びについて話し合いながら、左迫間さんは今年のできごとを思い出してくれました。

「西中学校の生徒たちが職業体験で1月に来て、山の掃除や木とかを集めてもらいました。二日目は『芋焼き』と言って、庭で芋と木を渡したんやけど、『火が点きません!』と生徒が言って、『こうやって点けんねん』と教えました」と。

焚き火をする機会がだんだん少なくなった時代、中学生にとって、とても新鮮な体験でした。「点いたら、すごい興奮しました!芋を見ながら、『火を入れるのが楽しい』や『火で癒される』と中学生が言ってました。芋が真っ黒やったけど」と左迫間さんは笑いました。「やるのが楽しいんでしょうね」。

お菓子を食べて、お互いを助け合う時間

料理を作ったり、みかん狩りやバーベキューの受付をしたりした一日が終わってから、天理観光農園のみなさんにはまだ大切な習慣があります。「私はコーヒーを最後に飲みたくて、みんなを巻き込んでからなんで、十何年前からかな、『お茶飲もう』とみなさんに言っています」と左迫間さんは言いました。

みなさんはその日を振り返り、よかったことや改善できることなどについて、ゆっくり話し合える時間です。「お菓子を食べながら、『こっちの方がいいよな、こうしようか』とちょっとずつ変えて、『どうだった、あの人?』『喜んでいます』『よかった、こっちでいこう』など、そういう反省会」と彼女は会話の例をしてくれました。

左迫間さんは一人だけで、朝からバタバタしながら、なかなか気づかないことがあります。それがみなさんに助けてもらっているところです。「足りないところに気づけることが難しいかなと思います」と左迫間さんは言いました。「本当にみんなはすごくて、みんなを尊敬しています。私、全然できへんから、みんなに助けられているとほんまに思います」。

会いたい人がここにいるから

天理市園原町に生まれて育った左迫間さんは、自分の町について話をしてくれました。「このあたりの山が好きです。天理市は、人が大好きです。場所と言ったら、会いたい人のいる場所が好きです。コフフンも好きやし、天理中学校も好きやし、朝和小学校も好きやし、いろんなところのお祭りも好きで、好きなところだらけです」。

彼女は自分の地域に誇りがあり、地元に貢献したい心も強いです。「それは『シビックプライド』と言いますよね。住んでいる人だけじゃなくて、来た人にもそれを感じてもらえるような活動をどんどん、『ここが素晴らしい』みたいな地域の良さを分かってもらいたいです。一回でいいから、とりあえず、来てください。一回来てもらったら、きっと、『ここもいいよ、ここもいいよ、、また来るわって』。楽しいです!」。

家業に帰って、幅広く活躍している左迫間さんは、やりたいことがまだあります。「馬で山の辺の道を歩いてほしいです」と彼女は目をキラキラさせました。「観光でいいです、山の辺の道に来た人は、馬に乗って、山の辺の道を昔の人みたいに歩く。めっちゃ楽しそうじゃないですか?」。

新たな遊び方を考えながら、これからも、みなさんに愛されている天理観光農園をこのままで大切にします。

「20年後?頭にあるのは、来てくれはる人には、昔から変わらないでいた方がいいやろうなと思っています。すぐ変わった方がいいと思いがちですけど、お客さんは『ここが変わっていないから、いい』って言ってくれはるから」と左迫間さんは微笑みました。「私にとって、ここは楽しいところ、元気になるところです!」。

天理観光農園のホームページ

Cafe わわのインスタグラム

→前編『蜜柑小屋で始まった、代々の観光農園』

 

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