てんりせいかつ

てんりせいかつ Vol/04
自然があって、仲間がいて。
やっぱりそれは幸せなこと。
—後編—

くらし
2018.08.09

第4回

長滝復刻堂本舗

小西通夫 氏

「てんりせいかつ」では、天理で自分らしく暮らし、活動されている魅力的な方々を訪ね巡りご紹介していきます。今回は、第3回に続き天理市の山間部にある長滝町で活動されている長滝復刻堂本舗の代表である小西さんです。小西さん自身は造園業を営みながら、仕事のかたわらで「昔の風景」を取り戻す活動に尽力されている方。小西さんが好きな天理の風景とはどんな風景なのでしょう。ご自宅でお話を伺いました。

喜んでくれる人がいるから
ここがさらに好きになる

子どもの頃に見たホタルが舞う風景を取り戻すために、自家繁殖にトライし続ける小西さんだが、実際にはかなり手こずっている様子。それでも挑み続けるのにはちょっとした訳があった。「来年もやってやろうというモチベーションのほとんどはもう意地ですわ。みんな冗談半分ですが、ムリムリ、やめとけ、とからかってくるんです。それが逆に原動力になってますね」と笑って話してくれた。自然を取り戻すのは簡単なことではない。それは小西さん自身が身にしみて知っているはず。長滝復刻堂本舗の活動を続ける原動力は他にはどんなことがあるのか聞いてみると、そこには「喜んでくれる人」の存在があった。

「この場所と何のゆかりもない人が、どこかから聞きつけて遊びにきてくれて、そういうのは一番励みになりますね。近所の人たちも長滝復刻堂本舗の活動には協力してくれますしね。住んでいるところに少しでも活気を取り戻し、美しくするために40代の人たちが熱心に協力してくれることが頼もしい」と小西さん。ホタルが飛んでいたり、魚が泳いでいたりすることはここに住む大人にとってもうれしいことなのだ。「生まれ育った場所だからやっているだけ。他所でこんなことやらへんで(笑)」。小西さんはいたって自然体だ。

少し物哀しい風景が
お気に入りの天理の景色

天理で生まれ育った小西さんに天理のどんな景色が好きかを聞いてみたら、この土地ならではの答えがかえってきた。「秋の山の辺の道は好きですね。何より夕日が綺麗で、その夕日をバックに柿の木があって。何となく物哀しいでしょ。葉っぱも散ってしまって裸の木が佇んでいる。寂しい景色なんですが落ち着くんです。ずっとずっと昔と変わってないところが好きなのかもしれません」。造園業を営む小西さんは、いまその庭づくりで培った感性と技術を自然に返していこうと模索している。「造園のいいところは自然のいいところを取り込んでいけること。今度は逆に庭のいいところを自然に返していけるといいなと思っています。これからつくっていきたい風景は、四季を通じて心が安らぐ風景です。春は桜、夏はホタル、秋は紅葉、冬は滝の氷柱。植樹したことで杉一色だった山に彩りが戻ってきて、季節ごとに色づくのはうれしいですね」と小西さんの夢は膨らみ続けている。

子どもが遊べるところを
もっともっとつくっていく

夏になると集落に住むおじいちゃん・おばあちゃんの元に孫たちが帰省する機会が増えてくる。それもあってか小西さんは親子で来た時に遊べるところをもっとつくっていきたいと語る。「川辺で工作ができるテーブルやピザ窯、わさび畑などをこれまでもつくってきましたが、他にも充実させていきたいですね。高齢になって田んぼ仕事ができなくなって、田んぼを使ってくれと言ってくれる方もいますので、さらに力を入れていかないとですよ」。この場所の自然に初めて触れる子どもたちを、この自然を昔から愛する大人たちが力を合わせて迎える。自然を中心に仲間ができる。地域のコミュニティにおいて中心的な役割も果たしている長滝復刻堂本舗はこれからも目が離せない。

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