てんりせいかつ

てんりせいかつ Vol/06
1日だけのイベントではなく、
毎日が国際色豊かな町へ。
—後編—

芸術文化
2018.09.15

第6回

ワールドフェスティバル天理実行委員長

井上久光 氏

「てんりせいかつ」では、天理で自分らしく暮らし、活動されている魅力的な方々を訪ね巡りご紹介していきます。今回は、前回に引き続き、毎年天理駅前広場で開催されているワールドフェスティバル天理の実行委員長である井上久光さん。大学進学をきっかけに天理に住み始めた井上さんは、天理大学の職員として働きながら、学外でも様々な活動で人の交流を生み出す仕掛け人。井上さんが見る天理の魅力とは?

日本が生まれた場所から
日本文化を発信していく。

ワールドフェスティバル天理は、単に海外の食や音楽、文化を楽しむイベントではなく、日本文化の発信にも力をいれている。日本が誕生した地で開催されるイベントとしてもその意味は大きい。「国際交流ですから日本文化も必要ですよね。だから朝和公民館の着物教室の方々にお声がけしました。着物で来ていただいて、着物ショーをやっていただいています。服装による国際交流ですね。そうすると出演者の外国人の方が着物の方と並んで記念撮影したり、そんな場面が自然にできるわけです」。手作り感に溢れながらも芯の通ったこのフェスティバルは、他の地域の外国人の集まりからも注目されはじめているようだ。「去年は奈良で働く外国人青年の集まりがワールドフェスティバル天理で国際交流しよう!と自分らで企画して遊びにきてくれました。天理市以外でも認知度が上がってきていることを実感しています。今年はもっといろんな方が交われるような仕掛けを用意する予定です!」。

地元の若者たちが
世界に触れるチャンス。

井上さんはワールドフェスティバル天理をただの打ち上げ花火的なイベントにはしたくないと語る。「去年から会場内でスタンプラリーをはじめたんです。そうすると子どもたちが楽しそうに参加してくれるんですよね。彼らはスタンプを集めるために各国の音楽やダンスを見て料理を食べて世界に触れます。たった1日の体験ですが、世界に対して意識するきっかけにはなると思うんです」。子どもたち以外の人にとってもこのイベントが世界への入り口になってほしいとその想いを語ってくれた。「JICA(青年海外協力隊)の方に毎年出ていただいているんです。世界のことを紹介してもらったり、青年海外協力隊の募集も行ってもらっています。本当に世界への入り口になりますからね」。井上さんは今後、JICAに加えて旅行代理店や各国の大使館、総領事館にも声をかけながら、さらに国際色豊かにしていきたいと意気込む。「参加したことがきっかけで海外留学に行きました!とかそんな話が出てきたら本当にうれしいですね」。

商店街ともコラボレーション。
おっちゃんと話して豪華商品!?

今年のワールドフェスティバル天理は駅前だけで終わらず、商店街でも楽しんでもらう新たな企画が盛り込まれる予定だという。「商店街とコラボレーションしてスタンプラリーをパワーアップします。ワールドフェスティバル天理に来た人に商店街まで足を運んでほしいと考えたからです」。会場内のお店と商店街の両方にあるスタンプを集めて、スタンプラリーをクリアすれば天理の特産品が抽選であたる。井上さんらはそのハードルを極力下げながらも、「人と人の交流」に重きを置いたアイデアで多くの方に参加してもらうような工夫をしていた。「商店街の人とじゃんけんをして、勝っても負けてもスタンプがもらえることを、若手スタッフが考案してくれました。大事なのはそこでしゃべってもらうこと。とにかく交流することが大切ですので、買い物はしなくてもいいことにしました。次に天理に来た時に、あのお店に顔だしてみようかな、とか、せっかく来たからちょっとだけ買おうかとか。長い目で天理のファンをつくっていけたらと思っています」。こうした仕組みを整えたことで商店街の人たちにとってもワールドフェスティバル天理が自分事になり、お互いが連携できるいい関係になれたと井上さんは語る。

2018年はムーディーな
前夜祭からスタート。

さらに、これまで1日限りだったワールドフェスティバル天理だが、今年は前日の夜に前夜祭が行われることになっている。「ムーディーな前夜祭をやろうと思うんです。弦楽四重奏と二胡とギターのユニット、ベリーダンスとフラダンスと社交ダンスのワークショップ。大人はお酒を飲みながら、ホロ酔いでちょっとムーディーに楽しむ時間を用意してみました」。井上さんらはその前夜祭の延長線上に、これもまたイベントだけにとどまらない町づくりのアイデアを持っている。「週末に天理に行ったら、どこかで生演奏をやっていて、ビールやワインやカクテルが楽しめる。そんな文化の香りが漂う町になるといいなと思っているんです」。今回の前夜祭は井上さんの中ではそんな未来のための最初の一歩。井上さんら実行委員会の構想力と実現力を見ていると、それも決して夢物語ではないと思えてくる。

日常的に国際性が
感じられるようになることが理想的。

井上さんは天理大学インドネシア学科卒業生の有志らとボランティアで商店街近くにお店を持っている。その活動はワールドフェスティバル天理のその先を見据えている。「僕らはインドネシアショップ『ルマ ドリアン』というのを運営しているんです。その店をスタートさせたのは、国際交流を年に1日だけのイベントにしてしまうのではなく、いつ行っても天理には各国の料理屋さんや雑貨屋さんがあるみたいなにしたいと思ったから。世界のいろんなものに出会える町になったらいいなと考えたからです」。井上さんが想い描く理想の天理は、世界の人々が集い、交流し、そのつながりからまた新しいことが生まれる場所。その目は、天理の町おこしをしたいと心に決めた時と変わらない真っ直ぐな想いに溢れていた。

 

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