てんりせいかつ

てんりせいかつ Vol/14
日本の雅楽は
世界の雅楽に。
—後編—

歴史
2019.03.03

第14回

天理大学雅楽部総監督
佐藤浩司 氏

「てんりせいかつ」では、天理で自分らしく暮らし、活躍されている方々を訪ね巡りご紹介していきます。今回は、天理大学雅楽部総監督として研究と演奏を通して雅楽を日本中、世界中に発信している佐藤先生です。ご自身も学生時代は雅楽に打ち込み、卒業後も同大学で教鞭を取りながら指導者、顧問を経て現職へ。佐藤先生が考える雅楽の魅力を歴史ある建物の中で伺いました。

いい音楽はジャンルを越えて
世界から受け入れられる。

天理大学雅楽部は昭和50年(1975)の韓国、香港、台湾公演を皮切りにアメリカ、シンガポール、タイ、ネパール、インド、カナダ、ブラジル、メキシコ、コロンビア…と世界各国へ29回に及ぶ公演活動を行い、佐藤先生はそのすべてに同行してきた。海外での反響は?という質問をよくされるが、海外だからと特別に構える必要はないと先生は語る。「そういう質問をいただくと私も逆にみなさんにお聞きするんですが、海外のいい文学や音楽、芸能に触れた時、それを何か別世界の特別なモノとは捉えませんよね?どこへいってもいい音楽はいい音楽。日本人でも西洋のクラッシックのよさは感覚的にわかるように、いい演奏はいい演奏として受け入れられます。アジアでもヨーロッパでも中南米でもどこでも一緒です」。

世界に広がる雅楽。
最前線には教え子も。

今や雅楽は日本人だけのものではない。世界の有名大学にある楽団では非常に高いレベルで演奏されているのだ。「アメリカのUCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)には元宮内庁の演奏家が指導に渡り、日本人顔負けの演奏ができるまでになっています。私たちも以前、海外公演をアメリカでやりたいと考えUCLAを訪ねたのですが、どうやら我々よりも先に演奏公演に来た大学があったようで、しかも、その演奏が散々たるものだったそうなのです。そんなことがあったので簡単には公演を受け入れてもらえず、UCLAの方に天理大学まで演奏を聞きに来ていただき“許可”をもらう形になりました。それくらい海外でのレベルも上がっているんです」。佐藤先生の教え子の中には、ドイツ・ケルン大学で雅楽を教えている方もいる。天理から巣立った学生が世界で日本の文化を伝承している。

東大寺の法要、薬師寺の
伎楽会での舞踊と演奏。

奈良の地で活動をしていると、歴史的な場面での演奏を依頼されることもある。昭和55年、東大寺昭和大修理落慶法要ではNHKの委嘱により、幻の天平芸能と言われている「伎楽(ぎがく)」の復元演奏をつとめた。以来、毎年一曲ずつ復元を重ね、約10年をかけて文献に表れている伎楽曲が一通り揃うことになった。「伎楽と雅楽はまったくの別ものです。最初は乗り気ではない学生もいましたが、やっているうちにだんだん面白くなって、今では伎楽も雅楽もできる団体になりました」。平成4年からは、薬師寺の依頼で新伎楽「三蔵法師」に取り組み、5月5日の伎楽会という催しで、天理大学雅楽部による伎楽の奉納は風物詩になっているほどだ。

雅楽で日本文学を編む、
『源氏物語』の続編に挑みたい。

雅楽部にはオリジナルの演目があり、それは『源氏物語』である。源氏物語をテーマに、それぞれの巻に合う楽曲の演奏会をこれまでに14回重ねてきた。そもそものきっかけは、当初、東京公演をしようと企画した時に、思い付きで選曲して演奏しても長続きしないだろうという思いがあったからだという。ずっと続けていくために必要なのはテーマ性。それを何にしようかと考えた末に出てきたのが「源氏物語」だったのだ。「この巻を表現するのに必要な楽曲はなんだろうと考え、選曲する過程で曲の復元が必要になれば復元し、そこで新たな曲に出会いながら雅楽部は成長してきたんです。今は部員たちの意向もあって演奏はしていないのですが、歴代の学生たちがここまで積み重ねてきた財産ですので、もっといろんな曲を取り入れてさらに深めていきたいですね」。2014年を最後に休止していた東京公演、5年間の充電期間を経て進化を遂げた彼らが織りなす調べに注目だ。

■第41回東京公演
3月8日(金)18:00開演(1時間前開場)
新宿文化センター 全席指定席(座席は一階席のみ)
前売り:2,000円 当日:3,000円 学生:1,000円

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