てんりせいかつ

てんりせいかつ Vol/35
真美体操で「踊って楽しい、見て楽しい、そしてみんな元気に!」
―前編―

くらし
2022.03.15

第35回

Gymnastique活利 運営者
西田 智恵子 氏

「てんりせいかつ」では、天理で自分らしく暮らし、活躍されている方々を訪ね巡りご紹介しています。今回は、35年前から体操の活動で天理市を盛り上げている西田智恵子さんです。体操を始めたきっかけ、活動が広がった展開について、天理市豊井町のスタジオで伺いました。

ワン・ツーと体操に出会い、
インストラクターの道を歩む

「今日もみなさんの素敵な笑顔を見せるために、大きな輪になっていつものマーチを始めましょう!」と西田智恵子さんはスタジオに通ってきた「気楽嬉楽(きらきら)クラブ」のみなさんに元気な声で言いました。天理市豊井町の「Gymnastique(ジムナスティーク)活利」スタジオで、60代から80代までの男女が、「ワン・ツー、ワン・ツー」と腕を振って、足を上げながら、フェイスシールドやマスクを通した笑顔を見せてくれました。曲が終わったら、「さすが!毎回やっているから、今日も完璧です!」と西田さんのコメントに、みなさんが笑いました。

西田さんは豊井町出身で、このスタジオの近くの家で育ちました。35年前、勤め先の先輩に健康体操教室のお誘いを受け、毎週通うようになりました。「最初は、体を動かして、すっきりしただけでしたが、演技発表の場もあり、自分を表現して人に見てもらえる、それを喜んでもらえる、という楽しさを感じました」と彼女は思い出しました。

子どものころ、自分の中学校の先生に憧れて、「教えたい」心を持った西田さんは、体操にハマりインストラクターコースに入りました。それが「真美(しんび)体操」との出会いでした。真美体操とは、幅広い音楽のジャンルに振り付けられた体操で、子どもから大人までが楽しめる、時には衣装を着けて楽しくダンスできる体操です。自分が楽しむだけではなく、見ている人にも楽しんでもらえるという特徴が彼女の心に響きました。「『踊って楽しい、見て楽しい』。それが私がこの体操を長く続けられている理由です」と西田さんは微笑みました。

非日常的な時間で、
公民館活動にさわやかな風

真美体操のインストラクターになって、初めて教えたのは天理市の二階堂公民館のクラブでした。西田さんは会社に勤めながら、土曜日に主婦の方を中心にした教室で教えました。「当時のお母さんたちは、家事や子育てに専念している人も多く、自分のために使う時間は少なかったですからね。でも、日頃着たことのないような衣装を着けて踊って見てもらうことで、非日常的な時間を楽しめたんだと思う」。しかも、公民館祭りのクラブ発表では「それまでは、日本舞踊や民謡、詩吟のような発表が多かったけど、私たち普通の主婦がスパッツを履いて健康的に踊るということで、会場が盛り上がって喜んでくれはったかな」。

結婚出産で勤めていた会社をやめることになり、自分の教室もしばらく休むことにしました。3年後、仕事に戻る選択肢もあったが、自分のパッションへ舵を切りました。「自分がこの体操をもっと仲間に広めたくて、体操の指導にもっと力を入れたいと思ったのはそこからです」。二階堂公民館の教室を復活してから、そのうち、前栽公民館や丹波市公民館からも声がかかり、又、子どもたちにも教えてほしいと要望がありました。

スペシャリストではなくても、
元気で喜んでもらえる

「『自分の子にも教えてほしいわ』、という人が出てきて、最初、長柄体育館を借りて教え始めた」。それが「ジュニア真美」の誕生でした。2005年には大人チームとジュニアチーム、その保護者までもが加わり「チームHappiness真美」を結成。よさこいソーラン「天理な祭り」や県内外の体操イベントに出演しました。

チームのモットーは「心ひとつに、笑顔全開!」です。「スペシャリストのダンス集団を目指すのではなく、人の前で自分を楽しく表現すること、いろんな世代の人と関わり思いやりの心を持つことを大切にしています」。

コロナの時代までは、毎年、Happiness真美の大人とジュニアで、櫟本にある高齢者施設「清寿苑」に20年近く慰問活動を続けていました。30分ほどの演技発表をしてから、年配の方々と一緒に体操をして、楽しい時間を過ごすのです。「おじいちゃん、おばあちゃんたちは子供たちと会う機会が少ないから、最後にみんなで握手をすると、涙を流されるんです。そして私たちも元気をいただいて帰ります」と西田さんは思い出しました。「プロの集団ではないですが、踊る子供たちやチームみんなの笑顔で喜んでもらえることがすごいですね」。

自分たちの居場所で、
仲間に会える

西田さんは長い間、公民館や体育館を借りて教室を続けながら、自分の拠点を作る夢を持っていました。約13年前に「Gymnastique活利」のスタジオを作り、その夢を叶えました。「活利」に込めた名前の由来は、この場所で、活き活きと心と体に利を得ていただきたい想いからです。入り口の近くに色とりどりの衣装が並んでいます。年配の方の前で踊る子供たちの写真や、大会に出演した大人たちの写真が壁に飾ってあります。「みんな、ここを自分の居場所としてくれて、すごく嬉しい。ここに来たら仲間に会える、そんな感じですよ」。

先日、気楽嬉楽クラブが終わってから、メンバーのみなさんは大きな円に座りました。いつもの語らいタイムでした。数十年前から体操の教室に来ているメンバーがいます。一時間以上かかるような遠いところから来ているメンバーもいます。みなさんは西田さんについて、順番に話してくれました。「西田先生は太陽です!」と一人が言ったら、みなさんは笑って手を叩きました。「先生は本当に太陽です。だから、みなさんが集まってくるんです。以上です!」。

西田さんは「踊って楽しい、見て楽しい、そしてみんな元気に!」の心を広げながら、天理市で体操する仲間を増やし、自分たちの居場所を作ることができました。海外の大会「世界体操祭」に参加した経験、「天理パフォーマンスフェスティバル」と「いちょう体操」の活動、天理市に対する想いを後編で紹介します。

 

後編→

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