てんりせいかつ

てんりせいかつ Vol/13
雅楽を求めて
北海道から天理へ。—前編—

歴史
2019.02.21

第13回

天理大学雅楽部総監督
佐藤浩司氏

「てんりせいかつ」では、天理で自分らしく暮らし、活躍されている方々を訪ね巡りご紹介していきます。今回は、天理大学雅楽部総監督として研究と演奏を通して雅楽を日本中、世界中に発信している佐藤先生です。ご自身も学生時代は雅楽に打ち込み、卒業後も同大学で教鞭を取りながら指導者、顧問を経て現職へ。佐藤先生が考える雅楽の魅力を歴史ある建物の中で伺いました。

テレビから流れた、
宮内庁の演奏に心を奪われた。

幼少期を北海道上川郡当麻町で過ごした佐藤先生。家が天理教の教会だったこともあり、祭典の音楽として雅楽には物心ついた頃から触れていたとのこと。ところが耳に入ってはいても雅楽には無関心で吹奏楽に夢中だったという。「雅楽は変な音を鳴らしているなあ、というくらいで聴いていましたね」と当時を振り返る。ところがある日、偶然つけていたNHKから宮内庁の演奏が流れ、衝撃を受けたという。「家で流れていたものと全然違いました(笑)。学校でレコードを借りて聴き始めてから、一気に雅楽への興味が湧きました」。さらにそれに追い打ちをかけるように、天理大学に進学し雅楽部で活動していた兄弟が、大学の友人を連れて帰省してきた時にみんなで演奏をしてくれるのを聴いたことも進路選択に大きく影響したという。「自分も北海道を出て、天理大学で雅楽がやりたいと思いましたね」。

3つの管楽器から
迷わず選んだ篳篥(ひちりき)。

雅楽部ではまず楽器を選ぶことから始まる。篳篥(ひちりき)、龍笛、笙(しょう)。3つの管楽器の中から1つだけを選びそれを極めていくことが決め事になっているのだ。一度決めたらそれ以外はやらない。それは宮内庁でも一緒だという。どの楽器が本人に向いているかは性格的なもので選んだ方がいいと佐藤先生。「自分で決められない学生には、君にはこれがいいと思うよと私から勧めます。龍笛に向いている人は生真面目な人。笙は縁の下の力持ち。篳篥は龍笛と笙の間をいったりきたりする自由気ままなタイプの人ですかね。私ですか?私はもう入部する前から篳篥と決めていました。なんといってもメインが吹けますから(笑)」。

楽曲の復元にも力を入れ、
昔の調べを現代に蘇らす。

雅楽を演奏する団体の多くは古くから演奏されてきた曲の“再演”がメインになるが、天理大学雅楽部は楽曲の復元も行うことが特徴のひとつに挙げられる。「平安時代に隆盛した古代歌謡『催馬楽(さいばら)』はもともと64曲ほどあったとされているのですが、応仁の乱で消えてしまったのです。江戸時代から復曲がなされるのですが、それでも宮内庁で10曲。それではもったいないということで我々は年に1曲ずつ『催馬楽』を復元し、全部で27曲を現代に蘇らせました」。なぜ、天理大学で消えた楽曲が復元できるのか?それは公卿雅楽家である綾小路家の文書が大学図書館に保管されているからだ。「雅楽をやるにはこの上ない環境ですね。綾小路家の資料があるということで誰も異論は言えませんから」。

40年以上つづく定期公演。
活動休止期間を経て復活へ。

天理大学の雅楽部と言えば、プロ顔負けの定期公演でも有名だ。地元天理はもちろん、東京、大阪、九州、北海道での遠征公演でも好評を博してきた。ところが近年になり、部として納得のいくレベルの演奏ができなくなったことやその他の事情が絡み合い、2015年から定期公演は休止状態になっていた。「私が学生の頃から始まった定期公演でしたので、なくなったときは非常に残念でした。ただ、その当時は顧問でもありませんでしたので、なりゆきを見守るしかありませんでした」。

ところが今の3回生が本腰を入れ始めたことで風向きが変わったという。2017年にまず天理公演が復活。今年ついに東京公演も復活することになった。「『青海波(せいがいは)』という曲を演奏するのに装束をつくったんですね。生地は学内では作れませんので、京都の織屋さんに頼みました。2017年当時は服飾をやったことのない男子学生しかおらず、織屋さんから反物が届いてもなかなかハサミを入れられずにあたふたしていました。『かまへんから切れ〜!』と私が言ってやっとハサミを入れられたくらいで(笑)。すべてをプロの手に任せると1000万円以上してしまいますので、学生たちが自分で刺繍を入れた思い出の装束です。そういう意味で雅楽部は服飾が好きな学生も歓迎なんです(笑)」。当時を思い出して笑顔を見せる佐藤先生。そして誰よりも復活を喜んでいる定期公演がいよいよ始まる。

■第49回天理公演
2月25日(月)18:00開演(30分前開場)
天理市民会館 全席自由席
前売り:1,000円 当日:1,500円 学生:500円

■第41回東京公演
3月8日(金)18:00開演(1時間前開場)
新宿文化センター 全席指定席(座席は一階席のみ)
前売り:2,000円 当日:3,000円 学生:1,000円

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後編につづく===

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