てんりせいかつ

てんりせいかつ Vol/30
野菜を伝える楽しみ、
ここで暮らし続ける意味
━後編━

くらし
2021.10.22

第30回

農家カフェ「けやき」
岡田洋子 氏 と 岡田明 氏

「てんりせいかつ」では、天理で自分らしく暮らし、活躍されている方々を訪ね巡りご紹介しています。今回は前回に引き続き、天理市杣之内町で農家カフェ「けやき」を始めた岡田洋子さんと明さんです。料理に込めた想い、変わった野菜を伝える楽しみ、この地域で暮らし続ける意味について伺いました。

肉や魚の付け合わせではない。
そこから出発。

天理市杣之内町で、農家カフェ「けやき」を営む岡田夫婦。代々受け継がれた土地に、イタリアからの種を植えて、珍しい野菜を育てている明さん。その野菜を使って、料理を開発している洋子さん。丸なすのチーズ焼き、野菜の大葉ハンバーグ、コリンキーとビーツのサラダ、金時草とそうめんかぼちゃの酢の物。開業して10年が経っても、洋子さんはこういう「変わった野菜」の料理を通して、世界に伝えたいことがまだあります。

「野菜は肉や魚の付け合わせじゃないんだよ。じゅうぶんそれでメインにもなるし、変わった野菜もあるし、知らない野菜をたくさん知ってほしい。それを伝えたい」と洋子さんは言いました。

視野を拡大して、野菜を見直したら、野菜の本来の美味しさを知ることができます。それが洋子さんの提案です。「魚だったら、捕りたての魚を刺身で食べますよね。例えば、きゅうりを朝から採ってきて、金山寺味噌につけて、ぱりぱりと食べていただく。スーパーのきゅうり、味が違うと思うね。そういう新鮮な野菜の味を知ってほしい。それが出発点です。」

野菜で人をびっくりさせる、
知らない世界を教えてもらう楽しみ

どれほど忙しくても、洋子さんはいつもお客さんのテーブルに行って、その日の料理を直接説明するようにしています。この小さな交流が、彼女の大きな楽しみです。

「きっとお客様が『びっくりするやろう』のような料理が一番楽しいな」と洋子さんは大きな笑顔で言ってくれました。「例えば、白い人参があって、大根だと思わはるけど、『人参です』と言ったら、お客さんが『えっ?』と。その一言、『えっ?』を聞きたい」と彼女は笑いました。

お客さんとの交流が一方的ではなく、洋子さんは一人一人のお話を楽しく聞いています。「いろんなお客様とお話ができるから、知らなかった世界を見せてもらう。本当に一期一会で、いろんな方とお話ができて、教えてもらっている」と。

料理に込めている想い、お客さんと交流したい心。洋子さんが日々大切にしていることが結局、自分に返ってきます。「お世辞かもしれないけど、『美味しかったです』と喜んではったら、私はちょっと『やった!』の気分で!やりがいを感じるね、うれしい」と。

変わりつつある気候で、
古代の土地で暮らし続ける

これからサツマイモや栗の秋から、サトイモやむらさき人参の冬へ。数千年前から人がこの地域で暮らしていて、変わることがあり、変わらないこともあります。年々、毎日畑に行く岡田夫婦は野菜を通して、ものごとの変わり方を感じています。

「10年前に比べたら、雨も多いし、気候の温暖化で作物が早くできたり、また急に寒くなったりするね」と明さんは話しました。「作物が多くならへんから、そこらへん本当に毎年、気候の変化に悩んでいる。去年と同じように作れない、毎年変わる」と。

時代も、気候も、野菜のでき方も変わっても、農家としてこの土地で暮らすことが古代から基本的に変わっていないと二人は話しました。「野菜を作ることが、昔の人と変わらないこと、時代が変わっても、同じことをやってんねんなと思う。作業のやり方が変わっても、同じことをやっている」と明さん。

洋子さんは風景の変化を意識しながら、古代の生活との共通点を感じています。「この辺を見ていても、小さい古墳のところに柿畑ができたり、利用してはりますやん。だから、ずっと昔の人と同じように生活をしている人はいないけど、昔からの営みや生活があって、それを引き継いで、また後世に同じように伝える。時代が変わって、形が変わっていくけど」と。

明さんは小さな苦笑いを見せました。「変わらへんことをやってんなと思う。もうちょっと変わってもかまわへんと思うけど」と明さんは言って、二人で笑いました。

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