てんりせいかつ

てんりせいかつ Vol/34
「ちょっと美味しいもの」で、
お酒の楽しみ方が増える
―後編―

くらし
2021.12.23

第34回

登酒店 4代目
登和哉 氏

「てんりせいかつ」では、天理で自分らしく暮らし、活躍されている方々を訪ね巡りご紹介しています。今回は前回に引き続き、こだわりのあるお酒を一万点以上取り扱っている登酒店の4代目・登和哉さんです。地域とのつながりから産まれたお酒、10年間続いた「酒の会」、登さんの接客について、天理市田井庄町のお店で伺いました。

地域のつながりから産まれたブランド

登酒店の4代目である登和哉さんはアパレル販売員の経験を得て、家業に帰ってきて、お酒を販売するために、蔵の現場を経験しに行きました。そうやって蔵とのネットワークが広がり、数年前に、そのネットワークにある人たちをつなげる機会がありました。同じ天理市にある稲田酒造と、経験豊富な杜氏でした。

「稲田酒造さんは主に天理教さんや限られた地元の飲食店だけにお酒を卸していました。そういう杜氏さんが入ったら、こだわりの専門店、飲食店との付き合いが増えて、世界が広がると話しました」と登さんは振り返られました。その杜氏さんが造るお酒が、稲田酒造の「稲乃花」というブランドになりました。「ブランドを立ち上げるにあたっては、お手伝いをしただけです。造っているお酒に関して、相談を受けることはありますが、基本的に杜氏さんが造りたいようにしています」。

稲田酒造は地元のお酒を造るために、地元のお米をできるだけ使っています。「天理市と奈良県のお米を使うようにしていて、今、ぽかぽか工房のお米も使っています」と登さんは続けました。ぽかぽか工房は天理市にある障がい福祉事業所で、地域の休耕田や耕作放棄地を活用し、酒米「山田錦」を育てることで地域に貢献し、地域の酒蔵とともに天理の名物になるような地域に根ざした福祉のお酒を作りたいと願い6年前から活動されています。「できたお酒はもちろん美味しいし、地域のいろんなところがつながったりして、うれしいです」と、地域の福祉と産業と商業が協働する「オール天理」での取り組みに目を輝かせられます。

ハードルを下げた「酒の会」と、
人と飲む楽しさ

お酒の面白さを知ってもらうために、登酒店は月に一回程度、「酒の会」を開催していました。「お酒のハードルを下げる会でもありましたね」と登さんは言いました。「希望者を呼んで、毎回テーマが変わりました。日本酒が主であったけど、ワインの時もあれば、ビールの時もあって。普段スーパーで買えるようなお酒ではなくて、手造り感のあるものとか、地酒をみんなで楽しみました」。コロナ禍で休んでいるが、「酒の会」が10年間以上、150回続きました。登さん自身は人と飲むことが好きで、そのおかげで長く続けたのではないでしょうか。

「人と飲むのが好きで、ワイワイ、いろんな話をしたり、コミュニケーションをとったりするのが一番楽しいと思います」と登さんは話しました。お酒を飲む時、やっぱりお酒以外のものも大事です。「お酒は誰と飲むか、どこで飲むかによって味わいが変わってくると思います」と登さんは続けました。「安いお酒でも、キャンプに行って、友達とワイワイ飲むのが美味しいし。ただ、特別な空間ではなくて、家で楽しむものだったら、やっぱりちょっと美味しいものを飲みたいですね」。

お酒の選択肢が広がることで、
生活が豊かになる

登酒店は日本酒だけではなく、ワイン、焼酎、ビールなどを含めると、一万点以上の商品を取り扱っています。「仕入れるお酒が、ほとんど僕が飲みたいお酒です」と登さんは笑いました。「ちょっと美味しいもの」をお客さんに紹介するために、彼はまたアパレル業界での経験を参考にしています。「例えば、黒と白しか着ない人を見たら、『この人、ピンク似合うのにな』と思ったりします。でも、その人をほっといたら、黒と白しか買わないから、もったいないなと思って、どういう手でピンクに慣れさせるかと考えます」。

お酒の場合、テレビのCMなどが「辛口がいい」と強調するが、登さんはお酒の多様な色彩を紹介するようにしています。「聞き方として、『甘い、辛い』じゃなくて、『ちょっとフルーティーな感じ』や『すっきりした感じ』のような違う表現で聞くと、お客さんの選択肢が広がります」。

新たなものを紹介することが、結局、お客さんのためになります。それが登さんの一つの楽しみです。「日本酒を買いに来た人に、ワインやビールや焼酎を勧めるとか。その人が興味を示していなかったジャンルのものを飲めるようになったり、なんとなく生活が豊かになります」と登さんは言いました。「自分が関わることによって、何かしらお客さんの幅が広がるとか、そういう楽しみ方が増えたりすればいいなと思っています」。

登酒店のInstagram: nobori555

登酒店のホームページ 

前編へ→

BACK
Share

この記事をシェアする